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vol.6.1
口腔ケアや健康についての情報を提供してまいります。
1. 8020者の疫学調査から:健康創造(サルトジェネシス)との出会い
今日まで医学では、“なぜ人が病気になるか”を調べる病理志向の研究がなされてきたのに対し、人がなぜ健康でいられるかを研究する健康創造(サルトジェネシス:salutogenesis)という考え方をユダヤ系米国人の医療社会学者であるアントノフスキー(Antonovsky)は1979年に提唱しました。
一方、“8020運動”の調査から、80歳で20歯を保つためには小児の頃から生涯を通じて規則正しい食習慣や生活習慣を維持することが必要だとわかってきました。まさに“8020運動”(80歳20歯以上保とう)の研究は健康創造(サルトジェネシス)の研究といえます。その意味で、8020運動は歯科から医学、健康学へ放った健康創造の運動です。このように8020運動について疫学的研究手法に沿った研究は少なく、やっと今日スタートしたといっても過言ではありません。
8020運動が、生きがいのある楽しい人生を過ごすことを支援する運動であることを、これから順次お伝えしていきます。
8020の人へのインタビュー調査
愛知学院大学歯学部が中心となり、愛知県内で、20歯の維持のために、どのような生活習慣や態度が関係していたのか疫学的調査として訪問インタビューを行ないました1)~4)。その結果、8020の人は次のような特徴があることがわかりました。
歯磨きなどの口腔ケアに関するものだけでなく、しつけや生活習慣も8020達成に関連していることがわかりました。
愛知県のA市において、8020を達成している人は、達成していない人と何が違うのか、広く調査が実施されました。従来は、8020を達成していない人の要因を調査し、それを避ければ8020を達成できるだろうといった病理志向のアプローチでした。これは、8020達成に対して予測や期待をしてきたことになります。これに対し、8020を達成している要因を調査し、それに沿った行動を取ることで8020が達成できるようにしようと、調査が実施されました。
この調査に対し、世界的な歯科の疫学者であるロンドン大学のA.シャイハム(A.Sheiham)教授から、サルトジェネシスの考え方や手法を使っていると評価され、サルトジェネシスの提唱者であるアントノフスキーとの出会いにつながっていきました。
次回から、健康創造(サルトジェネシス)という考え方について解説し、それが8020運動やその疫学研究にいかに大切かを説明します。
中垣晴男 著:日本歯科評論 通刊第795号「8020と健康科学」、
株式会社ヒョーロン・パブリッシャーズ、 2009年 より
文 献
1) 水野照久ほか:80歳で20歯以上保有するための生活習慣. 日本公衛誌,40:189-195,1993.
2) 水野照久ほか:常滑市における80歳歯科健康調査. 口腔衛生会誌,44:161-169,1994.
3) Morita I, et al:Relationship between survival rates and numbers of natural teeth in an
elderly Japanese population. Gerodontology,23:214-218,2006.
4) Morita I, et al: Salutogenic factors that may enhance lifelong oral health in an elderly
Japanese population. Gerodontology,24:47-51,2007.
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